手前味噌☆漫画の制作過程その3~~下描き・ペン入れ編~~☆☆脳作業から手作業へ?☆☆ 漫画の作業過程、前回日記までに長々と綴ったわりに、『プロット』→『ネーム』といった初期段階のみで留まっておりますが…。 『創作ッ』というノリは、実はネーム完成の段階で、ほぼ終えている…と申しても過言では無いように思われます。 編集サンからネームのOKがいただけさえすれば、あとはひたすら、原稿完成に向けて、物理的作業に勤しめば良い訳で、ここで『頭脳労働者から肉体労働者へ転身ッ』という感じでもあります。 …メデタクそこに到るまで…。 ネーム第一稿完成から、ネームのOKがいただけるまでがスンナリと行かず、『イバラの道』だったりする事が多めではあるのですが…。 (ネーム第一稿作成より、直しの方が時間がかかりがち…という私めの悩みも、いずれまたお話申し上げたいと思ひます) ともあれ、脳をフル回転させて、それまで己が脳内妄想でしかなかった漫画世界を、とりあえずは、人様にご理解いただける仕様として生み出されるものが、『ネーム』。 いわば『設計図』の完成。 それに従って、下絵→ペン入れ→ベタ・ホワイト→トーン貼り…と、印刷に足る画稿の完成を目指しての、物理的作業になる訳です。 とは申せ…。 ネーム段階で入れているラフラフな絵を、下描きにし始めた場合…。 デリーター 漫画原稿用紙 メモリ付Aタイプ B4(プロ・投稿サイズ) 135kg 40枚入 ↑こういう、市販の漫画専用原稿用紙(いくつかのメーカーから、幾種類かずつ販売されております)に下描きしてゆきます。 作品全体の雰囲気を、編集サンにお判りいただければそれで良し!という感じで、正確なデッサンなどあまり考えずに、勢いだけで入れていたネームの絵を、今度は読者様にご覧いただく絵として、少しでも見栄えを良くしよう…と、細部の整合性などにもこだわりながら入れていかねばならぬこの作業…。 デッサン力の無い身といたしましては、こうかな?ああかな?と悩みながら描くことの方が多い辺りで、これはこれで、廃脳フル回転な作業とも申せます…。 (基礎画力の高いかたは、きっと、それほど頭を悩まされず、サラサラと流れるように作業されているので御座りませう…)(遠い羨望眼) そしてこの日記でも少々触れておりますが、ネーム段階ではそれほど気にしていなかった構図(遠景にするか、アップにするか…など)を考え直したりもいたしますゆえ、そういうところでも、頭脳作業未だ続行中…という感じです。 これはあくまで、ネームでは突っ走り描きをしがちの私めが陥るところで、ネーム段階で「これって、このまま下描きとして使えるじゃないっスか!!」というくらい、緻密で正確で、綺麗な絵が入ったネームを作成するかたには無い事かと存じます。 …そう…。私めは、ネームはネーム、下描きは下描きとして、ネームを横に置いて、それを見ながら原稿用紙に、改めて絵を描き始めるというやり方をしておりますが…。 ネームで緻密な絵を入れておいて、原稿用紙に、それをそのままトレースする…という手法のかたもおいでです。 (ネーム用紙が小さめの場合は、原稿サイズに合うよう拡大コピーしてトレス) さらに申さば、線画からもうデジタル作業に入る場合、ネームの絵を整えつつ、直・ペン入れに移行…という事も可能な訳です。 ネームの段階から『紙』でなく、デジタルならばもう、ネーム・直!→本原稿にも出来ます訳で…。 実際、既にそういう作業形態の漫画家も、昨今は増えて来ているかと存じます。 昨年のエプ反乱(PCクラッシュ)で、デジタルへの不信感を抱いてなければ、私めも即、その環境を整える方向に行っていた気がするのですが…。 まぁ、その辺りのマイ逡巡につきましては、これまた、また改めて…。 ☆☆ひたすらに、なぞるべし!☆☆ 下描きを終えたら、その線を『印刷に出る線』にすべく、ペン入れ作業に入ります。 下描き完了後、それを編集部へFAXしたりしなかったり…は、これまた作家それぞれ、編集部の体制それぞれで違ったりもするのですが…。 (これに関しまして、先程『写植』の説明などもしつつ、つらつら書いていたのですが、うっかり消去…。落ち込みのまま、こたびはスルーさせていただきます…) ともあれ…。 鉛筆(シャープペンシル)で入れた下描きを、ペンでひたすらに『なぞる』作業、それが『ペン入れ』であります。 漫画で使用する『ペン先』は、幾種類かありまして、これまた、人それぞれの好みがあるのですが…。 メール便対応します!【コミック用ペン先 Gペン 10本入 PB-6B-C-K】漫画やイラスト描きに最... ↑人物の主線などに、よく使われるのがこのGペンで…。(弾力性に富み、力加減で太い線から細い線まで、かなりの強弱を表現できます) ↓こういった専用の軸に付けて、使います。 丸ペン・Gペン・サジペン共通にご使用できます【タチカワ】フリーペン軸 T-40 (安全キャップ付... そのペン先に 開明墨汁 70ml ↑この墨汁を付けて、下描きの線をなぞって行きます。(ノビが良く、線もつややかに見えますので私めは墨汁派ですが、耐水性の『製図用インク』を使う方も多いです) 話がやや前後してしまいますが…。 またまた手前味噌ではあるのですが、ペン入れの作業手順といたしまして、私めの場合、まず全ページの枠線(コマを囲む太めの直線)とフキダシから入れてしまいます。 ワク線は、昔は『カラス口』という特殊なペンや、使い込んで太い線しか引けなくなったGペンが使われたりしたものですが…。 今は、0.8くらいのミリペンをお使いの方が多い気がいたします。 ピグマペン 0,8 かく申します私めも、一時期、便利ゆえに上記ミリペンを使用しておりましたものの…。消しゴムをかけると線がやや薄くなるので、以前フンパツして購入の『ロットリング』に戻っておりまふ。 適切な空気調節で美しい線を実現ロットリング ラピッドグラフIPL 0.7mm ワク線の次、登場人物がしゃべるセリフを囲む風船のようなアレ、『フキダシ』を入れる作業は…。 背景同様、人物の線よりも印象が強くならないよう、なるべく細い線を入れたいがために、私めは丸ペンで入れております。 ゼブラ丸ペン10本入り フキダシも、0.05のミリペンをお使いのかたや、ロットリングで入れるかたもおいでで、人それぞれ…という印象です。 さて、このペン入れ作業…。 下描きの線がいい加減だったり、はたまた、下描きで悩み過ぎたがために「この何本もある鉛筆線の、いったいどれをなぞったものやら…」という罠が多めだったりいたしますと、これはこれで遅滞ぎみになってしまいましたり…。 かつまた、Gペンや丸ペンの使い心地が悪かったり(製品によってアタリハズレがあったりすることも…)、湿気のせいで、殊更にペンが紙に引っ掛かったり…。(ゆえに、雨天はペン入れの敵なのです☆)(かと申して、雨だから…と暢気にしていられる訳もない締め切り前は、ドライヤー登場) 気持ちよく、ノリノリでペンが入れられる…という至福の瞬間は、なかなかに少なかったりする訳です。 まぁでも、「お♪けっこうエエ感じでペン入れできたかも♪♪」という絵が、作品中一箇所でもあると、この後の地道な仕上げ作業の、ささやかな励みにも…。 (後日、冷静になってからその絵を見て『大いなる勘違い』だったことに気付くのですが☆) ☆☆されど『背景』…☆☆ 登場人物の後ろに見える、風景やら室内やら…の『背景』描き…。 ぶっちゃけ、嫌いな作業です。 アナログの『トーン削り』作業の、次くらいに嫌いです。 (トーンはデジタルの現在、『背景』、一番嫌いな作業に躍り出たか??) 『背景』は、作中、登場人物がどこに居るのか、どういう状況で話が運んでいるかを読者様にご認識いただく、縁の下の力持ち的・大事な絵ではあるのですが…。 あと、登場人物が手にしてたりする『小物』を描くのも面倒☆ (もはや『説明文』でなく、『愚痴』…) 時代物が描けるのは、夢のような幸せではあるのですが、このところは、『刀』を描くのが面倒で…。(小声) キリシタンさんが首から下げておいでの、アレも面倒で…。(チョー小声) とにもかくにも、かように「イヤだ」と思っておりますがゆえに、つい後回しにしてしまうのが、この背景・小物を描き込む作業です。 作業手順といたしましては、人物主線の他、背景や小物の下描きもきちんと入れてから…の方がはかどりやすいとは思うのですが、私めの場合、人物のペンを入れ終わってから、背景の下絵に入ったりいたします。 (下描き完成段階では、ほとんどの背景が、だいたいの線しか入っていない『アタリ』の状態…) 仕上げをデジタルでするようになって、建物遠景など、使い回しの出来るものは別の紙に書いておいて、それを作品内の別のコマで何度か使う…という事もやっておりますのですが…。 例えば室内など、人物の立ち位置などと厳密に絡む背景は、意外にその使いまわしが出来ませず、その都度描いたりしておりますゆえ、意外に手間で…。 人物のペンを入れ終わってから、原稿用紙に消しゴムをかけられるまで、私めの場合、すんなりと行かない次第なので御座います。 かように『ヤな事は後回し派』の私めでも、登場人物が手にしているものなどは、如何に面倒でも、人物より先にペン入れをしておくほうが、効率が良い…と認識、例えば、拙作「桃山灰神楽」の『笛』などは、確か、フキダシを入れた後すぐに描き込んでいた気がします。 笛はわりと簡単だったのですが、こたびは、登場回数は少なめだったものの、火縄銃(短筒)が出て参りまして…。 『キング・オブ・面倒☆描きもの』でござりました…。 ともあれ、艱難辛苦の末、背景もすべてペンを入れ終えますと…。 ようやっと『消しゴムかけ』♪ これは、それこそ単純作業の最たるものゆえ、手の疲れは生じるものの、けっこう好きな作業です。 あまりにも何も考えず、油断して消しゴムを動かしておりますと、うっかり紙に寄りジワを発生させてしまったりもするのですが…。(シワの形状から、『アコーディオン』との呼称アリ) あ。この背景などの一連作業、売れっ子の漫画家さんなれば、「アシスタントさんにお・ま・か・せ♪」というところではあるのですが…。 売れっ子でもなく、かつまた諸般の事情でアシスタントさんにおいでいただきにくい環境で描いております私め、すべて己一人の作業であります。 他人様ご来訪の場合、性格的に「『お接待』にリキ入れまくって、肝心の原稿が疎かに…」という事態にもなりがちで…。(お客サンに慣れていない環境で成長~~) 背景描きに飽きながら、いい加減なペン線を入れている折など、「エキスパート様に、ステキ背景を描いてもらひたい…」というドリームを抱いたりすることもありまするが…。 オンライン経由の、デジタル・アシスタントさんになら、そのうちお願いすることもあるやも??などと考えていたりする、基本・引きこもりの漫画描きナタ55なのでありました☆ |